Last Letter

 

ずっと日記を書くのを避けていた。

誰にも見せない僕だけの文章から、僕はずっと顔をそむけていた。

 

無意識に怖かったからだろう。

自分に嘘をつくことが。

自分にさえ嘘をつくようになってしまった自分と対峙することが。

 

3年半も前のブログでは、

「嘘をつくのが嫌いだ」と言いながら嘘をついていた僕が、

ついには息を吐くように嘘をつけるようになった。

 

立派に社会に適合しようと試みたのだ。

それにより私は変人でも凡人でもない中途半端な存在になってしまった訳だけれど。

 

思えば私のメタ認知はこういうところとも関連があるのかもしれない。

嘘をつく、というのは裏を返せば、相手の望みに応えることであり、

つまり相手視点の「目」を手に入れることだ。

 

それで私は、嘘を平気でつくようになってから、

主観を大きく失ってしまったのかもしれない。

 

 

なので、今回は久々に嘘も衒いもなく、恥も外聞も気にせずに文章を書きたいと思う。

しかもそれを「手紙」という形式で。

 

本来であれば、私しか見ないという安全圏であるがゆえの真実を、

他者に伝える前提の形式で綴っていく。

そうすることで、僕は少しずつ主観性を取り戻していきたいのだ。

 

それが善いことなのか悪いことなのか、

私にはわからない。

壮大な自己満足だとも思う。

しかし今の状態が僕にとって、そして相手にとっても望ましいとは思わないのだ。

 

という訳で、この文章を

もう4年付き合っている恋人への手紙としたい。

 

 

ブログを見返すと、3年前、まだ付き合って1年ほどの、

あなたに対する気持ちがつづられていた。

今よりも確実に湿度と熱量の大きいその文章に、

僕は自分で書いたはずなのに少し驚いてしまった。

 

ちゃんとあなたを恋愛として好きだった時期があったのだな、と

率直に言えばそう思ってしまった。

 

もちろん、今でもあなたのことは好きだ。

それなりに大切に思っているつもりだし、

あなたと話していると楽しいことの方が多い。

あなたがいなくては日々の豊かさの大半が損なわれてしまうだろうという実感もある。

 

しかし、付き合って四年、

恋愛としてときめくような感情はもう殆ど起こらない。

恋愛のときめきと性欲はやはり全く別物であることがわかる。

重なっているところもなくはないだろうけれど、同じものでは決してない。

 

失礼なことを言っているかもしれないが、

それはおそらくあなたも同じであろうと推測する。

だから私たちは、時折別れるとかひどいことを言ってみたりして、

停滞した関係性の凹凸をなんとかつけようと試みているのだ。

 

それはまるで、停滞した教室の関係性のなかで

誰かをいじったりいじられたりしたキャラづけをして、

コミュニティの行き詰まりを解消しようとするがごとく。

 

俗にいう倦怠期である。

私たちはとっくにその時期に到達している。

それはもう言い逃れようのない事実だ。

 

自分のときめきがいつ減退したのか、

はっきりとした時期はわからないけれど、

最後にときめきらしきものを観測したのは

ふたりで嵐山に行ったときだったような気がする。

 

そんなことはないか。

でも、去年の春くらいからだんだん冷めていったような。

 

結局、自分の就活が終わった瞬間からか。

身勝手だ。あまりにも。

 

 

自分の、こういう身の振り方には覚えがある。

高校3年生、受験期。元カノともそうだった。

 

付き合いたての時は私の方が依存して、

ふたりに溺れていくように仕向けたのに、

いざ自分の気持ちが冷めてくると、

もしくは相手の依存度が自分のそれを上回ると、

途端にそれを重荷に感じて、自分が何か窮屈なものに閉じ込められているような気がしてくる。

 

受験期に私たちの愛の天秤は逆転し、

私は彼女に冷たくし、

結果、その影響があってかないかはわからないが彼女は受験に失敗した。

 

しかし大学での立ち回りは当然彼女の方がうまくて、

というより、自分の選択を正しいものにせんという努力を彼女はしたことによって、

私に対する依存度を急激に下げ、

1年生の5月か6月には天秤がふたたび逆転。

 

彼女の態度が急に冷たくなり、そのまま夏に破局することになる。

 

共依存の恋愛なんてこんなものだ。

熱しやすく冷めやすい。

 

お互いがお互いを必要としている時だけ、その関係は熱を帯びる。

 

 

いまでも私は、そんな恋愛をしている。

というか、そういう形以外の恋愛のやり方を知らない。

 

それはたぶん、大半は自分の孤独のせいなのだろう。

 

 

だから、いま私があなたと4年続いている理由は、

お互いにまだお互いが必要だから、というほかない。

 

そんなことは、多分言わなくてもあなたはわかっているでしょ?

 

私たちの関係はもう恋人じゃなくていい。

親友とかでいい。

 

あなたはもうセックスしたいとも思ってない。

異性としての魅力を感じている訳でもない。

 

ただ自分のことをよく知っていて、長らく付き合っている私といるのが楽なだけだ。

家族友人以外の第三のコミュニティの存在に安心しているだけだ。

 

あるいは。

4年という途方もない時間、心を溶かし合ったことによって、

それらを引きちぎる活性化エネルギーのコストを払うのが嫌なだけだ。

 

なんて。

あなたの本当の気持ちはわからないけれど。

今のが私の本当の気持ちだよ。

 

もう恋人じゃなくていい。

ただ話したいことを話す相手として、

もしくは趣味の聞き手として、

わたし/あなたは必要だった。

多分いまもきっと必要としている。

 

ただひとつ違うのは、わたしには人並みに(それ以上に?)性欲があって、

その解消相手としてもあなたを必要としているという点。

 

酷いね。

ひどいって思うけど、でも処女を捨てたいと言ったのはあなたでしょう?

 

私たちの関係はセフレから始まっている。

だから何という訳でもないけれど。

それで愚かにも好きになってしまったのは私の方だけれど。

 

でも、あなたは処女でいることへの不安を解消したくて私を利用した。

私も性的欲求のためにあなたを利用した。

 

それは同じ程度にひどくて、わるいことだったはず。

 

・・・なんて、自分の前でも言い訳ばっかだ。

ほらまた自分かばった。

 

 

何度も別れ話をしたね。

そのたびに互いが互いを引き留めてきた。

 

愛の天秤がどちらかに傾いたとき、

どちらかにとっては不必要で不自由でも、

どちらかにとっては必要な関係だから。

 

 

そして、今お互いに同じくらい微妙に冷めていて、

でも遠距離なのもあって付き合うままでのデメリットもそんなになくて、

別れるメリットもそんなになくて、

 

だからこんなにつまらない毎日が続いている。

退屈な関係をだらだらと続けてしまっている。

 

 

しかし、ここにきて私が別れたいと思っているのは、

付き合っていることのメリットが漸減してきていることと、

付き合っていることのデメリットが発覚していることにある。

 

前者はさっきも言ったように、

あなたに性欲がなくなってきていることだ。

性欲がないあなたとセックスするのは私にとっても楽しくない。

コミュニケーションではなく作業になってしまうから。

 

すごく最低なことを言っている自覚はある。

でも、そもそももうこんな物理みたいに恋愛とか交際を考えている時点で、

ここには理屈じゃない恋愛感情が存在していない。

それなのに交際を続けていること自体が不自然で、最低なのだ。

だから、セックスという交際のメリットが漸減してきた今、恋人関係を続ける必要性はますます小さくなっている。

 

話は少しそれるけど、でも私はいまも別れを切り出すのを迷ってもいる。

それは別れるデメリットももちろんあるからだ。

それは、単純に「友達をひとり失う」ということである。

 

あなたに負けないくらい、私にはコミュニティが少なくて、

あなたと話せなくなるのはつらい。

あなたと創作の話をしたり、音楽の話ができなくなるのは単純にかなしい。

 

だから本当は以前のような友達に戻りたい。

セックスも介入しない、ただちょっと仲のいい男女に戻りたい。

 

しかし、そんなことは許されない。

世間はどうか知らないが、あなたは許さないだろう。

 

恋人と別れるということは、他人よりも他人になるということだ。

出会う前よりも他人になる、ということだ。

友達に戻れるなら友達に戻りましょうと今すぐ言っている。

 

それが叶えば…どれだけよかったか。

それが私の本当の願いであり、気持ちなのに。

それを口に出すことは許されない。

 

 

話を戻して、

後者、付き合うことのデメリットについて。

 

これは「嘘をつき続ける」という事実だ。

私はこのデメリットを軽視していた。

 

冒頭でも書いた通り、私は昔嘘をつくのが下手だったが、

今では息を吐くように嘘をつくことができるようになった。

 

このぬるま湯と冷えた水の中間のような交際関係のために、

体裁上の「すき」を吐き続けた。

いつからそれが嘘になってしまったのか、私には思い出せない。

もはやその境界はどこにもないのかもしれないが。

 

ファジー理論と同じように、

いつのまにか心を見たら「スキ」という感情がなくなっていた。

二値的な関係じゃないから、心はアナログだから、

分からないけれど、でももうこれが恋じゃないことだけは明確であって。

 

だから、今現状嘘をついていることも変わらない。

 

私の本心を偽っていて、

しかもコイバナをする機会はあるから、そのたびに嘘をつく必要があって、

それが本当に面倒くさくて、

私が私を私でなくしていくようで。

 

あなたに嘘をつくことがつらいのではない。

自分に噓をつくのがつらいのだ。

 

あなたに嘘なんていくらでもつける。

そもそも嘘を教えてくれたのはあなただから。

あなたがもともと噓つきだったのだから。

 

3年前のブログにも書いたけど、

私はあなたを笑顔にするために嘘をついてきたんだよ。

 

でも、私が嘘をつくたびに私はやっぱり摩耗していた。

変なメタ認知を手にしてしまった。

 

子どもの頃、自分が確かに持っていた変人さは、

変なこだわりは、視野狭窄は、どこにいってしまったのか?

 

僕は何がすきなのか? 僕は何がきらいなのか?

 

わからなくなってしまった。

 

どうでもいいけど、一人称を変えたのもちょうど3年前くらいだったかもな。

「わたし」ちょっと気に入っていたけれど、

そもそもきっかけをあまり覚えてないけど、でもあなただったような?

 

なんか言葉の強さを矯正しようとした時期があったんだよな。

 

いろいろ、私も丸くなろうと頑張っていたんだな。今思えば。

それが私なりの誠意だったけれど、それが僕を殺していたのかもしれない。

 

その責任を転嫁したいわけではまったくないけれど。

 

でも、周りの先輩見てたらさ。同期見てたらさ。

変人のあなたの友達を見てたらさ。

 

もう一度嘘のつけない僕に戻りたくなってしまったよ。

 

もう一度、子供みたいな変人の僕になりたくなってしまったよ。

そこにありのままの僕がいた気がするんだよ。

もっと僕に自信を持つことができた気がするんだよ。

 

 

なんていうのは、やっぱりわがままなのかな。

あなたと別れれば、それが全部叶うだなんて、思い込みもいいところかな。

 

ね、ひどいよね。やっぱり。

でも、もうこれから大した変化も卒業もない人生で、

少しぐらい変化を起こしたいと思ってしまったんだ。

 

何かが終わらなければ何も始まらなくて、

私は何かが始まるかもしれないという物語の萌芽に期待をしてみたくて、

こんな停滞から抜け出したくて仕方ないんだ。

 

ひとりになって、私が何ができるのか。

同じようにくだらない休日を過ごすのかもしれないけれど。

というか絶対そうなんだけど。

 

ひとりになったからこそできることがあるかもしれないって。

なんかそう思っちゃってるんだよな。

そんなの、別に今でもやろうと思えばできるのに。

 

いや、結局私は何がしたいというより、ひとりになりたいだけなのかもしれない。

心の換気をして、思考の風通しをよくしたいだけなのかもしれない。

 

 

自己中心的だね。

私が元カノの受験期に少なからず悪い影響を与えたように、

私はあなたの大学生活に少なからず悪影響を与えた。

 

翻ってあなたは私が死にたくて死にたくて仕方がない時に、

私の代わりに泣いてくれた。

 

それを忘れている訳じゃない。

感謝してる。罪悪感もある。

だからこうして、あなたがしんどいうちは一緒にいようと思っていたんだ。

 

でも、あなたの状況は丸1年経っても改善の兆しが見えず、

私の目にはあなたは現実逃避を続けているようにしか見えない。

 

そう、私と付き合うあなたの最大のメリットは現実逃避のお遊び相手なんだ。

 

もちろんそれを承知で私は付き合ってきたけれど、

そろそろ限界だと思う。

 

あなたも感じていると思うけど、最近は肝心の「話していて楽しい」とか「遊んでいて楽」みたいな互いにとっての最大のメリットが機能しなくなっている。

シンプルに合わなくなってきてしまった。

 

それは私が仕事で疲れているとか、

そもそも立場の違いとか、まあ理由はいろいろあるだろうけど、

今に始まったことでもないだろう。

 

 

だから、もう別れませんか。

友達に戻ろうなんて言いません。

 

もう離れませんか。

 

 

本当は、あなたに返さなくてはいけないこと、いっぱいある。

あなたが私を生かしてくれたから、

私はあなたが死んでしまうのだけは絶対に防ぎたい。

 

それだけはしてほしくない。

 

 

なんて、これも自分のせいと思いたくないのかな。

まあ、恩返しがしたいなんてのも大概自己満足だけれど。

 

 

私はいま、最低なことを考えています。

あなたの本心を覗き見てしまうということです。

 

もしあなたが私と同じ気持ちなら、

きっとあなたも嘘をついている。

 

それがばれてしまえばいい。

 

 

 

そしたら、ようやく本音で話し合えるでしょう?

 

 

 

 

 

 

僕は嘘が嫌いだ。

こんな子供っぽい自己満足のためにあなたを傷つける。

 

最低だ。

その先に、誰かを本心から愛せる日がまた来てほしいと本気で願ってしまう僕が。

 

 

 

誰かと本心で愛し合いたいと祈っている自分が。

 

 

 

 

 

 

 

本当にごめん。

ごめんなさい。

 

 

 

 

Traumatic

 

僕はかなり、恋愛が上手になったと最近よく思う。

 

恋愛、というよりは交際、である。

遠距離恋愛と言ってもいいかもしれない。

 

 

劣等感や嫉妬心の向き合い方も少しは分かるようになった。

処理の仕方も、前より断然マシになった。

 

そして、これは前にも書いたが、嘘をつけるようになった。

 

真実を全て預けるのをやめた。

 

 

それは、この恋愛が永遠じゃないことを知っているから、というのもあるのかもしれないけど。

 

僕は、彼女に僕のすべてを預けるのをやめたのだ。

……と言っても9割は見せているけれど。

 

 

しかし、それでも、どうしても、僕は。

 

「彼女のすべてを知りたい」

 

そう思ってしまうのである。

そうでないと不安で仕方がないのだ。

 

 

この理由を最近考えているが、まず思い当たるのはアレだ。

 

「嘘をつかれていた」というトラウマだ。

 

前の彼女も、今の彼女も。なんなら中学の時だって多分そう。

 

僕は、隠されるということに関して人一倍敏感になってしまっている。

 

そして、元カノのとどめの一撃で、僕はむしろ

 

「残酷な真実に傷つくことで安心する」

 

そんな人間になってしまった。

 

 

僕は、彼女が知ってほしくない彼女を知ってしまった。

 

知られたら「別れる」とまで言われてしまった。

 

 

それでも、僕は彼女が「知られたくない」感情が、理解できなくて。

 

僕は全部の彼女を知りたいと執念に駆られてしまう。

 

でないと、僕は不安で不安でたまらないのだ。

 

 

心が乾いて渇いて、仕方がないのである。

 

 

 

苦しい。

僕は、こんな狂気じみた自分の感情が気持ち悪くて、許せなくて、

でも消せなくて、本当に別れてしまおうかとも思った。

 

 

僕は、彼女のその「壁」を見て、少なからず「寂しい」と思ってしまった。

 

そして、少なからず、傷ついて、悲しかった。

 

別にその「秘密」自体にさして興味がある訳ではなかったが、

 

僕はとてもとても、悲しかった。

 

 

言ってしまえたらどんなに楽だろうか。

 

 

でも僕は怖いのだ。

 

去年の今頃のように、虚無な日々に戻るのが。

 

彼女に預けた僕が消えてしまうのが恐いのだ。

 

 

きっと、別れたら、彼女は鳥のように後腐れなく忘れてゆくだろう。

僕が彼女の中に残せるものなど、ほとんどないだろう。

 

彼女は僕と付き合って、何も変わっていないのだから。

 

 

それなのに、僕はもう僕という液体の中で混ざりに混ざって、取り出せなくなったあなたの色と、生きていかなくちゃいけない。

 

それがとてつもなく嫌なのだ。

 

恐いのだ。

 

 

あなたのことを愛していないわけじゃない。大好きだ。会うたびに確信する。

 

それなのに、僕はそれ以上に、「あなたに愛される僕」を愛している。

 

 

僕はそうやって生き繋いでいる。

 

 

こんな僕を彼女が見たら幻滅するだろうな。

もしかしたら、また別れを切り出すのかもしれない。

 

書いていて、涙が出そうになる。

 

 

それでも、それでも、僕は吐き出さずにはいられない、。

 

ここに、僕の真実を残しておく。

 

彼女は探そうと思えばいつでも見られる。

 

 

 

 

最近は結構うまくやれていただけに、きついね。

 

あなたが本アカに復帰して、それも少し危ういんだけど。

 

あなたの灯はいつだって儚く揺れているように見えて。

僕はそれに四六時中怯えて生きている。

 

謝っては笑って誤魔化して、「良い彼氏」を演じている。

 

 

ボロが出ないよう、今日も僕は頑張らなくちゃいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Loneliness

 

このブログを開設してから、一年が経った。

 

 

それはつまり、彼女と別れてから一年が経ったということだ。

 

そしてもうすぐ、彼女と付き合ってから三年が経つ。

 

 

残暑なんてものを感じさせないデジタル管理の令和ちゃんによって、

僕はまたあの秋を思い出す。

あの文化祭を思い出すのだ。

 

 

胸が無性に締め付けられるくせに、

 

あなたと笑ったこと、話したこと、泣いたことを、僕はもう忘れてしまっている。

 

ただ、あの時の感情だけが残っていて、僕は愛おしく、その思い出を抱きしめる。

 

 

 

 

 

今年の一月末に、新しい彼女が出来た。

 

僕はなんだかんだで、さっさと彼女を忘れたのだ。

否、地層の奥底に沈めたのだ。

 

自分でも変わり身の早さに驚いたが、そもそもこの恋は恋になるはずではなかったのである。

 

しかし、今はそれは置いておく。

 

 

 

僕は彼女にもう一度会いたいだとか、話したいだとか、思っていない。

 

あわよくばまだ好きでいてくれるかもなんて、微塵も思っていない。

 

そういう別れ方をしたのだから。

 

 

それは、新しい彼女ができて満足したから?

 

という訳じゃない。

 

 

僕は未だに、あなたのツイッターやインスタを毎日のように見に行ってしまう。

 

もうそれは執念とかではなく、まるで習慣のように。

 

 

しかし、リプやいいね欄まで確認している時点で、それは執念だったのだろう。

 

 

ただ、それは彼女自身への執念なんだろうか。

僕はもしかすると、彼女に預けた「自分」の欠片を必死に拾おうとしているのかもしれない。

 

僕は、二年近くの間、彼女の中で生きていたのだから。

 

 

 

「思春期特有の孤独感」というには、僕は少々人よりコミュニケーションが下手だ。

 

それ故に、多くの人と長い付き合いをすることができない。

それ故に故に、僕は孤独感に苛まれる。

 

人といるのが好きな性格ではないので、多くの人と付き合うと疲れる。

にもかかわらず、関係を切り捨てていった先に僕は、身勝手にも寂しいと宣うのだ。

 

ないものねだり、にしてもひどい。

 

 

とはいえ、この交友関係の狭さには、正直不満はあまりない。

問題が発露するのは、いつだって他人が絡むとき。

 

とりわけ、好きな人が絡む時だ。

 

彼女が僕より交友関係が広い時、僕はどうしようもなく劣等感を覚える。

そして、僕には彼女しか寄る辺がないのに、彼女には僕がいなくても平気に違いないなどと、直球メンヘラストレートなことを妄想するのだ。病気だ。

 

前の彼女とも、今の彼女とも、僕はこれで何度も間違いを犯している。

 

 

話が少しそれたが、普通、人は自分というアイデンティティを他者とのかかわりの中で見つける。

それは自分の性格だったり、個性だったり、役割だったり、客観的評価だったり、色々だろう。

 

 

しかし、他者との交流が乏しければ、自分というものは拡散していく。

 

だから、僕は彼女のアカウントを見に行ってしまうのではないか。

「彼女が好きだった僕」を忘れぬように、「かつて僕を預けていた彼女」を忘れぬようにしたいだけなのではないか。

 

 

僕は彼女の今を見て、知って、「僕を愛していた彼女」が喪失したことを思い知る。

そうして、僕は僕を慰めているような気すらする。

 

一つだけ確かに言えるのは、これは未練ではないということ。

 

僕は、時を巻き戻せない限り、彼女ともう二度と付き合うことはない。

天地がひっくり返っても無いが、彼女が僕に告白しても付き合わないだろう。

 

もう「やり直せない」と悟ったのだ。

 

 

なので、この習慣からもそろそろ卒業しようかと思っていたのだが。

 

少し良くないことが起きて、もう少しは無理そうである。

 

 

 

 

僕の恋愛は、僕の孤独が埋まらない限り上手くいかないのだろうか。

 

こんな予感が頭をよぎって離れないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Liar

 

僕は嘘が嫌いだ。

 

特に、嘘を言うのが嫌いだ。

 

 

特に特に、誰かに好かれるための嘘を言うのが嫌いだ。

 

 

 

 

でも、僕は今日も嘘を吐く。あなたに好かれるために。

 

 

 

 

 

好きな人の好きなものが自分の好みじゃなかったとき。

イマイチだなと思いながら、「面白かったよ」って。

 

寂しくて仕方がない夜に、「大丈夫」って。

 

いつか終わる恋愛に、「別れないよ」って。

 

 

自分を守るために、あなたを守るために。

 

 

去年の僕には考えられないことだ。

 

 

 

愛し合うということは、全てを受け止めることと信じて。

 

彼女に全ての真実を背負わせた。

 

 

結果、壊れた。

 

 

彼女は沢山の嘘をしたためていた。

 

 

 

 

だから、僕は学んで、成長して、下手だけどごまかしの笑顔を覚えて、

 

あなたを今日も騙している。

 

 

あなたが笑ってくれたら、それでいい。

 

あなたが嘘でも笑ってくれたら、いつかそれが本物に変わるかもしれない。

 

 

あなたの偽りに僕は騙されて、幸せになったことだってきっとあるだろう。

 

 

 

すごいね。

 

 

 

 

僕もそうやって、あなたを騙せたらいいのに。

 

 

僕はそんな僕を好きになれない。

 

僕はそんなあなたを好きになれない。

 

 

 

 

これは、ただの愚痴だ。

 

 

行き場をなくした本音の、ただの掃き溜めだ。

 

 

 

僕が嘘をついて笑うとき、僕は幸せになれない。

 

 

 

でも、それでも明日も嘘を吐く。

 

 

嘘を吐いて守ったあなたの笑顔が、僕を幸せにしてくれるから。

 

その幸せは「本物」だから。

 

 

そういうことにしよう。

そうしよう。

 

 

 

 

 

僕は、嘘が嫌いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Domestic Violence

彼女の僕に対する「憎」を今更ながらに読んだ。

 

それは、受験期からなんてものじゃなかった。

復縁したからなんてものじゃなかった。

 

付き合った当初のことも書いてあった。

 

「恋人いない歴=年齢でいいから、元カレがいた記憶を消したい」と言っていた。

 

僕は、その言い訳をずっと探している。

話は二年も前に遡る。

記憶も定かではないが、辿ってみる。

 

彼女は確かに、元々自分のことをよく話すし、マイペースで、でも誰かに尽くすことが大好きな人だった。

交換ノートを始めた当初は、手紙の応酬というよりは、独白のような日記みたいだった。

さすがに寂しくて、僕は言った。

 

自分の話も相手の話も半々で話せたらいいね、と。

ふたりの時は、できればふたりの話がしたいね、と。

 

彼女はそれに納得していなかった訳じゃなかっただろう。

それすらも全部受け止めるべき、受け入れるべきだと言われたらそうなのかもしれないが。でも、こういう風にしてふたりはひとつになっていくのだと、僕は思っていた。

僕は、その頃はまだ、自分に非があったとは到底思えない。

 

彼女は大好きな彼氏に、とても尽くそうとするようになった。

 

メールでも、手紙でも、交換ノートでも、ほぼほぼすべての話題にレスポンスを返す。

僕の文章の一文一文にきっちり対応させた返事を返すのだ。

それが、受験期になって無性に怖くなったのを覚えている。彼女の「依存」から逃げたいと思っていたのもなんとなく覚えている。

 

 

彼女は写真を撮るのが好きで、僕は少しだけそんな彼女が嫌いだった。

答えは簡単で、修学旅行で他の男子と写真で盛り上がってるのに嫉妬したからだ。

幼いと思うけど、きっと今もそう変わっていない。

だから、彼女が僕を置き去りにマイペースに写真を撮るのを、僕は寂しいと伝えた。

 

「趣味の制限までされた。」

 

確かにそうだ。彼女の趣味を制限したのは事実だ。

そんなマイペースな彼女のことも愛せたらよかった、そう思う。

でも、じゃあ、寂しがる僕のことは、伝えない方が良かったのだろうか。

ねえ、君はどう思う?

 

一応弁解をすると、僕は少しずつ彼女の写真を撮る趣味に対するある種トラウマみたいなものを克服しようとしていた。

高校前のイルミネーションをふたりで写真を撮り合って、そんなのがアルバムにたくさんある。友達に写真を撮るようになったのは「彼女さんの影響でしょ?」なんて言われたこともあった。僕だって、変わろうとしていた。寄り添おうとしていた、はずだ。

 

まあそんなことを言っても仕方がないけれど。

 

僕が醜かったことはいくらでもある。

劣等感や嫉妬心で、たくさん無駄な言い争いをしたことも覚えている。

 

あなたが、目の前でフォロワーを何人もブロ解し始めた時は怖かった。

 

「あなたがいれば、別に他の人なんていらないし」って。

 

本気で言ったその目が、怖かった。そんなことを望んでいた訳じゃなかった。

 

でも、ただ人に愛される彼女に負い目を感じただけで。

あの頃の僕はその醜い感情との向き合い方を知らなかったのだ。

 

今も、その処理方法は知らないんだけども。

 

 

喧嘩した日、雨の中傘も差さずに彼女が僕を追ってきたこともあった。僕は彼女の引き留める連絡に気付かなかった。

そして自転車で30分以上かかる道のりを、彼女はひとり走ってきた。

 

そんな危うさを、彼女はずっと持っていた。

 

でもそれは愛の裏返しなのだと、あの頃は信じていた。

事実かどうかは分からない。依存の裏返し、の方がしっくりくる。というかまんま表か。

 

だが、それも今となってしまえば、すべて僕の汚名だ。僕の罪だ。

 

僕が悪いのも、彼女に楽しかった思い出など不必要だということも、重々分かって入るつもりだ。

 

 

それでも。でも。

全て一緒くたにされた「加害者」の僕は、もうこの先どう歩けばいいか分からない。

 

膝が震える。声も出せない。

 

醜い僕は仕舞ったままで、生きていくしかないのか。

 

 

 

「加害者」になるくらいなら「被害者」でいいと、僕は言う。

 

それなのに。

 

 

「こんなに寂しいのは嫌だ」と幼子のように喚く僕もいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Love and hate are two sides of the same coin.

 

少し肌寒い風が、というかもう冬だろみたいな空気が、僕を過去に連れていく。

 

季節の変わり目に昔から滅法弱い。どうしたって記憶がフラッシュバックしてしまう。

 

後夜祭の日、花火の下で告白したこと。

あなたの手をポケットに入れて散歩したこと。

巨大なクリスマツリーの前で初めてキスをしたこと。

栄まで走ってプレゼントを買いに行ったこと。

あなたと阪大のOCに来たこと。

あなたがものすごい猫舌で、たこ焼きが全然食べられなかったこと。

なぜかそれに苛立ったこと。

クラスが違う文化祭準備でぎくしゃくしたこと。

後夜祭の日に「さよなら」といったこと。

鬱になって深夜に街に飛び出したこと。

なんとか話しまくって復縁したこと。

塾をサボって病院に行ったこと。

自分勝手にすがりつかせたこと。

一緒に塾のラウンジで勉強したこと。

上手くいかなくて、あなたに八つ当たりしたこと。

塾帰りのコンビニで一緒にカップ麺を食べたこと。

何度も餃子の王将に行ったこと。

レンゲを両手に持ったらかわいいって写真を撮られたこと。

センター前は余裕がなくなって距離をとったこと。

あなただけは手紙もクリスマスプレゼントもくれたこと。

もらった靴下のサイズが全然あってなかったこと。

それでもその気持ちが少し嬉しくて申し訳なかったこと。

「おはよう」と「おやすみ」だけのLINEに辟易していたこと。

受験期に散々あなたを振り回したこと、利用したこと、冷たくしたこと。

 

僕は、忘れないでいる。

いや、きっと忘れてしまったこと、憶えていないこと、たくさんある。

あなたを傷つけたこと、あなたに言われるまで思い出せなかったことはたくさんある。

それでももう、忘れたりしない。

 

あなたと純粋に恋をした一度目の秋のことを。

死ぬほど楽しかった一度目の冬のことを。

別れて復縁した二度目の秋のことを。

身勝手に距離を置いた二度目の冬のことを。

 

だから、あなたも忘れないでいてほしい。

いや、忘れようとしないでほしい。

 

あなたが裏垢で僕の悪口を三か月も前から言い続けていたのを知った日、

もう冷めかけていると知った日、

二人で朝から夜まで話し合ったあの日、

「気持ちが戻るまで待っていてほしい」と言ったあなたを、

ちゃんと気持ちを返したくてと不意にキスをしたあなたを、

なんでこんな風になったんだろうと呼吸できなくなるほど泣いたあなたを、

絶対に忘れないで。

 

あなたが別れを告げた日、「あの日本当は別れようと言おうとしてた」って。

でも言えなかっただけだって。

あの日のあの涙も嘘にして。過去の自分を殺して。

新しい自分を始めて。

きっとそれがあなたを守る手段だったと、防衛本能だとわかってはいるけど。

せめて、あんな自分もいたんだねって、受け入れてから前に進んで。

僕を愛したあなたを返してなんて言わない。

でもそんなあなたもちゃんとあなたの未来へ連れて行って。

 

あの夜、京都駅まで見送りに来たあなたに、

 

「これが会うのは最後になっちゃうかもね」

 

僕はもう、期待するのが怖くて言った。きっと泣きそうな顔で言った。

 

「そんなことない。ちゃんと会いに行くね」

 

ひと月以上も過ぎたけど、僕の誕生日プレゼントも買って持っていくからって。

 

“言ったくせに”と僕の「憎」が言う。

 

結局、僕が本当にならないでくれと口に出した言葉は、本当になった。

 

プレゼントが僕の手元に渡ることもなかった。

 

あなたにあげたユニバのチケットも、二人で行く為のものにはならなかった。

 

二年記念日に計画してた旅行も、行けなかった。

 

あなたがずっと見たいと言っていた僕の和装姿も、もう興味はないんだろう。

 

あなたがずっといたいと言っていた僕は、どこにいるんだろう。

 

「冷めさせてごめん」と僕の「愛」が言う。

 

 

Love and hate are two sides of the same coin.

 

愛憎は表裏一体。

 

 

まだ二つの僕が変わりばんこに現れては喧嘩して、

また今日も眠れない夜を過ごしている。

 

次彼女ができたら「あなたが彼氏で世界で一番幸せ」と言わしめるくらい、

大切にしてやればいいんだと。

 

いつ来るかも知らないIfで無理やり結論付けて。

 

 

でも、あなたが帰らないことも、過去に帰れないことも、事実だから。

 

今はこうして季節の波に任せて、ただ流されていようと思う。

 

 

しかし、やっぱりこの温度は人肌恋しくていけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Eros

Hiraeth

二度と帰れない場所に帰りたいと思う気持ち。

 

陳腐な言い方だが、心に穴が空いたようで。何かが欠けたようで。

今日もこの虚無と生きている。虚無を掻き消そうと踠いている。

 

Eros

元々一つだった離れ離れの二つがまた一つになろうとする気持ち。

 

あなたは二年近くも僕の心に住んでいた。

出会う前になど戻れるはずもない。元の世界とは違う。

あなたに出会う前の世界と、あなたの「喪失」がある今の世界は、物質的には同じのようで、決定的に違う。

 

多分僕は、あなたが愛してくれる僕が、好きだった。

あなたに愛される僕が、好きだった。

 

なのに、あなたに愛される僕でどうしていられなかったのか。

 

あなたのことは本当に好きだった。

あなたと通じ合えるだけで嬉しかった。

あなたとするすべてがドキドキで、新しく見えた。

でも、長い間一緒にいるにつれて、僕は「あなた」というよりも、「あなたといる時間、空間そのもの」を愛し始めたような気がする。思い返しても、思い返しても、あなたを好きだった理由は出てこなかった。

 

苦しい。苦い。思い出。

 

僕はあなたに心を預けすぎていたんだ。

僕はあなたの前では僕になれた。全てを受け入れてくれたあなたはとても優しかった。

いつからか、それに甘えすぎたのかもしれない。

僕はあなたがいなきゃ僕を保てなくなっていたのかもしれない。

あなたの前でしか泣けない。怒れない。無邪気に笑えない。

本当に依存していたのは、僕の方だったのかもしれない。

 

あなたに僕は間違いなく救われた。救われていた。

ここに、あなたがいるまでは。

唯一の救世主がいなくなった絶望は、誰にも助けてもらえばいい。

僕が唯一弱みを見せられたあなたに傷つけられた僕は、誰に泣けばいい。

 

あなたといたから、僕は僕でいられて、僕は僕を愛せた。

なぜ、あなたにとっての僕はそうでなくなってしまったんだろう。

 

半分を失ったような不完全な日々が続く。

なぜあなたはそうじゃないのだろう。

あなたの一部から、いつ僕を取り外していたんだろう。

 

前に失恋したときは、こんな気持ちにはならなかった。

付き合う日数が少なすぎて、弱みなんて見せられる余裕もなかったからだ。

かなり引きずったけど、喪失感はあまりなかったように思う。

 

忘れられたくないだなんて傲慢にも思ってしまう。

いつまで色のない世界は続くのか。

またいつか、同じように誰かと笑えるのだろうか。その「いつか」はいつ来るのか。

 

僕が僕であるために、あなたを利用してきた罰なのか。

あなたのことをもっと大切にできたらよかった。

あなたが彼氏で世界で一番幸せだと誇ってもらえる人であれたらよかった。

 

どうして、あんなに愛してくれていたのに。

それを全て冷ますようなことができるんだ。

 

愛おしそうになぞってくれた腕の血管は。

会うたびに触りたがった頬は。

優しくゆっくりさすってくれた背中は。

あなたが褒めてくれた声は、顔は、僕は。

 

もう価値なんてないのか。

 

他人から見たら悍ましいほどに、深く長く愛し合った。

だからこそ知ることができた感情もたくさんあった。

醜いものも、美しいものも。たくさん学んだ。

いま付き合った日に、もう一度戻れたら、うまくいかないかな。

 

そしたら、何よりあなたを大事にするのに。

 

 

はぁ。屑だなあ。

 

二度と会えないあなたの幸せを、僕は願えるかな。

もう忘れてしまいましたかと聞きたくなる僕を赦してくれ。

忘れて幸せになってと言えない僕をまだ、忘れないでくれ。